心配な牛乳アレルギー🍼 もしかしたら少量の粉ミルクが赤ちゃんを守るかも!🌟最新研究を徹底解説(もちろん母乳は大切✨)|せいせきこどもクリニック|多摩市一宮の小児科・小児アレルギー科

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心配な牛乳アレルギー🍼 もしかしたら少量の粉ミルクが赤ちゃんを守るかも!🌟最新研究を徹底解説(もちろん母乳は大切✨)

心配な牛乳アレルギー🍼 もしかしたら少量の粉ミルクが赤ちゃんを守るかも!🌟最新研究を徹底解説(もちろん母乳は大切✨)|せいせきこどもクリニック|多摩市一宮の小児科・小児アレルギー科

I. はじめに:ママの気持ち、すごくわかります!ミルク選びとアレルギーの不安 🤔💖

新しい命を迎え、喜びと同時にたくさんの選択に迫られるママたち。特に赤ちゃんの栄養については、「母乳がいいの?それとも粉ミルク?」「アレルギーが心配だけど、どうしたらいいの?」と、頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。情報があふれる中で、何が本当に赤ちゃんのためになるのか、不安に感じるのは当然のことです。

この記事では、そんなママたちの心配に寄り添い、特に「牛乳アレルギー(CMA:cow’s milk allergy)」の予防に関する最新の研究成果を、できるだけわかりやすくお伝えします。科学的な根拠に基づいて、ママたちが少しでも安心して、そして自信を持って赤ちゃんの栄養について考えられるようになることを目指しています。

大切なのは、情報を知って、それを元に「わが子にとって何が良いのか」を考えること。この記事が、そのための一助となれば幸いです。すべての赤ちゃんが、そしてママが、健やかな毎日を送れますように。

II. 赤ちゃんの牛乳アレルギーって、いったい何?簡単ガイド 🐮❓

「牛乳アレルギー」という言葉はよく耳にするけれど、具体的にどんなものなのでしょうか?まず、基本的なところから見ていきましょう。

牛乳アレルギー(CMA)とは、牛乳に含まれるタンパク質に対して、赤ちゃんの免疫システムが「異物だ!」と過剰に反応してしまう状態のことです 。私たちの体には、ウイルスや細菌などの外敵から身を守るための「免疫」という仕組みがありますが、食べ物に対してもこの免疫が誤って働いてしまうのが食物アレルギーです。

牛乳アレルギーの赤ちゃんに見られる症状はさまざまです。例えば、

  • じんましんや湿疹などの皮膚症状
  • 嘔吐や下痢、血便などの消化器症状
  • ゼーゼーしたり、咳が出たりする呼吸器症状
  • ミルクを飲んだ後に機嫌が悪くなる、ぐずる

などがあります。ただし、これらの症状が出たからといって、すぐに牛乳アレルギーと自己判断するのは禁物です。必ず医師の診察を受け、正しい診断を受けることが大切です 。

牛乳アレルギーは、乳幼児期に最もよく見られる食物アレルギーの一つで、その有病率は0.5%から4.9%と報告されています 。世界的に見ても、食物アレルギーは増加傾向にあり、大きな関心事となっています 。

このように、牛乳アレルギーは決して珍しいものではありません。だからこそ、多くのママたちが心配し、予防について知りたいと思うのは自然なことなのです。

III. 最新の科学が教えてくれること:粉ミルクはアレルギー予防の味方になる? 🔬💡

では、気になる牛乳アレルギーの予防について、最新の研究は何を教えてくれているのでしょうか?ここでは、日本の研究チームによる注目すべき2つの研究をご紹介します。

A. 発見1:毎日のほんの少しの粉ミルクが、アレルギー予防の大きな一歩に?(SPADE研究 🛡️)

まずご紹介するのは、沖縄で行われた「SPADE(スペード)研究」という大規模な研究です 。この研究は、一般の健康な赤ちゃんを対象に、ごく少量の牛乳製粉ミルク(CMF)を早期に摂取することが牛乳アレルギーの予防につながるかどうかを調べたものです。

「SPADE研究」ってどんな研究?

この研究は、沖縄県の4つの病院で生まれた新生児を対象に行われました 。研究に参加した赤ちゃんたちは、くじ引きのような方法で2つのグループに分けられました。このような研究方法を「ランダム化比較試験(RCT)」といい、科学的な信頼性が非常に高い方法とされています。

研究の内容は?

  • 摂取グループ: 生後1ヶ月から2ヶ月の間、毎日少なくとも10mL(小さじ2杯程度)の通常の牛乳製粉ミルクを飲みました。もちろん、母乳育児は続けながらです 。
  • 回避グループ: 同じく生後1ヶ月から2ヶ月の間、牛乳製粉ミルクを避けました。母乳だけでは足りない場合には、大豆由来の粉ミルクを使用しました 。 そして、とても大切なポイントは、どちらのグループの赤ちゃんも、母乳育児を続けることが推奨されたということです 。

驚きの結果!

生後6ヶ月になった時点で、牛乳アレルギーを発症した赤ちゃんの割合を比較したところ、驚くべき結果が出ました。

  • 少量の粉ミルクを毎日飲んでいた「摂取グループ」では、牛乳アレルギーを発症したのは、なんとわずか0.8%(242人中2人)でした 。
  • 一方、粉ミルクを避けていた「回避グループ」では、6.8%(249人中17人)の赤ちゃんが牛乳アレルギーを発症しました 1

これは、摂取グループの方が回避グループに比べて、牛乳アレルギーになるリスクが約9分の1に減ったことを意味します!この結果から、研究チームは「生後1ヶ月から2ヶ月の間に毎日牛乳製粉ミルクを摂取することで、牛乳アレルギーの発症を予防できる」と結論づけています 。

母乳育児中のママにも朗報! 🤱

この方法が素晴らしいのは、母乳育児を妨げなかった点です。生後6ヶ月の時点で、どちらのグループでも約70%のママが母乳育児を続けていました 1。つまり、この方法は母乳育児と両立できる可能性が高いのです。

10mLってどのくらい?

10mLというのは、本当にごく少量です。小さじで2~3杯程度。これなら、母乳がメインの赤ちゃんでも無理なく続けられそうですね。

安全性は?

研究期間中、この方法による粉ミルク摂取に関連した有害な出来事は報告されませんでした 。

SPADE研究 スナップショット:早期の粉ミルクとアレルギー予防

特徴 摂取グループ (生後1-2ヶ月、毎日CMF摂取) 回避グループ (生後1-2ヶ月、CMF回避)
赤ちゃんの数 (解析対象) 242人 249人
介入内容 10mL以上のCMF + 母乳 必要時大豆ミルク + 母乳
生後6ヶ月時点での牛乳アレルギー発症率 (%) 0.8% 6.8%
生後6ヶ月時点での母乳育児継続率 (%) 約70% 約70%

出典: Sakihara et al. (2020) 

このSPADE研究の結果は、アレルギー予防の考え方に新しい光を当てるものです。生後1ヶ月から2ヶ月という特定の期間が、赤ちゃんの免疫システムが牛乳タンパク質に「慣れる」ための大切な「窓(ウィンドウ・オブ・オポチュニティ)」である可能性が示唆されました。この時期に、ごく少量の牛乳タンパク質に触れることで、免疫システムがそれを「敵ではない」と認識し、アレルギー反応を起こしにくくなるのかもしれません。

さらに興味深いのは、この研究で、粉ミルクを摂取していたグループの赤ちゃん(牛乳に感作された乳児において)では、アレルギー反応を抑える働きがあると考えられている「カゼイン特異的IgG4抗体」という物質の血中濃度が高かったことです 。これは、ただ単に偶然アレルギーが減ったのではなく、免疫システムが良い方向に導かれた結果である可能性を示しています。

また、研究の詳細な解析では、生後1ヶ月から2ヶ月の間に、週に合計70mL以上(1日あたり10mLに相当)の粉ミルクを摂取していた赤ちゃんは、誰も牛乳アレルギーを発症しなかったこともわかっています 。これは、毎日コツコツと少量を与えることの重要性を示していると言えるでしょう。

B. 発見2:生まれてすぐはどうする?アレルギーリスクが高い赤ちゃんへの特別な注意点(ABC試験 🚦)

次にご紹介するのは、「ABC試験」という、こちらも日本の研究チームによるものです 。この研究は、SPADE研究とは少し異なり、アレルギーを発症するリスクが高いと考えられる赤ちゃんを対象に、**生まれてすぐの数日間(特に最初の3日間)**の栄養方法が、その後のアレルギー発症にどう影響するかを調べました。

「ABC試験」ってどんな研究?

この研究の対象となったのは、両親や兄弟にアレルギー疾患があるなど、将来アトピー性疾患を発症する可能性が高いと判断された新生児たちです 。

研究の内容は?(リスクの高い赤ちゃんへの、また別のアプローチ)

  • BF/EFグループ: 生まれてから少なくとも最初の3日間は母乳で育てられ、もし母乳だけでは足りない場合には、通常の牛乳製粉ミルクではなく、「アミノ酸ベースの元素製剤(EF)」という特殊なミルクが与えられました。元素製剤とは、タンパク質がアミノ酸レベルまで分解されており、アレルギー反応を極めて起こしにくいミルクのことです 。
  • BF+CMFグループ: 生まれた初日から母乳に加えて、通常の牛乳製粉ミルク(1日5mL以上)が与えられました 。

何がわかったの?(リスクの高い赤ちゃんの場合)

2歳になった時点で比較したところ、

  • 生まれて最初の3日間に牛乳製粉ミルクを避けた「BF/EFグループ」の赤ちゃんは、牛乳製粉ミルクを与えられた「BF+CMFグループ」の赤ちゃんに比べて、牛乳タンパク質に対するIgE抗体(アレルギー反応に関わる抗体)ができる「感作」のリスクが有意に低くなりました(BF/EF群16.8%に対し、BF+CMF群32.2%)。
  • さらに、実際に食物アレルギー(牛乳アレルギーを含む)を発症するリスクも低かったのです(例:即時型食物アレルギーの発症率は、BF/EF群2.6%に対し、BF+CMF群13.2%)。

この結果から、研究チームは「(アレルギーリスクの高い乳児において)生後少なくとも最初の3日間、牛乳製粉ミルクによる補給を避けることで、牛乳への感作や食物アレルギー(牛乳アレルギーやアナフィラキシーを含む)は主に予防可能である」と結論づけています 。

SPADE研究と矛盾しないの?

一見すると、「粉ミルクを飲ませた方がいいの?避けた方がいいの?」と混乱してしまうかもしれません。しかし、この2つの研究は対象としている赤ちゃんと時期が異なります。

  • 対象の赤ちゃんが違う: ABC試験はアレルギー発症リスクが高い赤ちゃん、SPADE研究は一般の赤ちゃんを対象としています。
  • 介入時期が違う: ABC試験は生まれてすぐの数日間、SPADE研究は生後1~2ヶ月という時期を見ています。

つまり、これらは矛盾する結果ではなく、赤ちゃんの状態や時期によって、最適なアプローチが異なる可能性を示唆しているのです。

特にアレルギーのリスクが高い赤ちゃんにとっては、生まれてすぐの数日間は、免疫システムが非常にデリケートで「過敏な時期(バルネラブル・ウィンドウ)」なのかもしれません。この時期に牛乳タンパク質に触れると、アレルギー反応を起こしやすくなる可能性があるため、慎重な対応が求められると考えられます。ABC試験の研究者たちは、生まれたばかりの赤ちゃんの腸内環境が未熟な時期に大量の牛乳タンパク質にさらされると、腸の粘膜のバリア機能が低下し、アレルゲンが体内に侵入しやすくなることで、食物アレルギーのリスクが高まるのではないか、という仮説を提唱しています 。

IV. じゃあ、うちの子にはどうすればいいの?科学を子育てに活かすヒント 🤱💡

さて、これらの最新研究の結果を、実際の育児にどう活かしていけば良いのでしょうか?

まず大前提として、母乳は赤ちゃんにとって最良の栄養であり、たくさんの健康効果があることは揺るぎない事実です。

その上で、今回の研究結果を踏まえると、

  • ほとんどの赤ちゃん(特に医師からアレルギーのリスクが高いと指摘されていない一般の赤ちゃん)にとっては、SPADE研究 1 の結果が参考になるでしょう。 つまり、生後1ヶ月から2ヶ月の間に、母乳育児を続けながら、毎日ごく少量(10mL程度)の通常の牛乳製粉ミルクを与えることで、牛乳アレルギーの発症リスクを大幅に減らせる可能性があるということです。これは、母乳を置き換えるのではなく、赤ちゃんの免疫システムを「トレーニング」するようなイメージです。
  • 一方、家族に強いアレルギー体質の方がいる、あるいは赤ちゃん自身に早期から重度のアトピー性皮膚炎が見られるなど、アレルギーのリスクが高いと考えられる場合は、ABC試験 の結果が重要になってきます。この場合は、生まれてすぐの数日間の栄養については、特に慎重に医師と相談する必要があるでしょう。医師は、初期の牛乳製粉ミルクの回避を勧めるかもしれません。

大切なのは、「母乳か粉ミルクか」「常に避けるべきか、常に与えるべきか」といった単純な二者択一ではないということです。**「どんな赤ちゃんに、いつ、どのくらいの量を」**という、より細やかな視点が求められているのです。SPADE研究が示す「アレルギーになりにくくするための窓(寛容導入のウィンドウ・オブ・オポチュニティ)」と、ABC試験が示唆するリスクの高い新生児における「アレルギーになりやすい過敏な窓(感作のバルネラブル・ウィンドウ)」、この2つの異なる「窓」の存在を理解することが、個別のアプローチにつながります。

これらの研究は、これまでアレルギーが発症してから治療するという流れが主だった中で、発症そのものを予防できるかもしれないという、積極的で早期からの予防戦略の可能性を示してくれた点で非常に画期的です。これは、アレルギーに悩むご家族にとって大きな希望となるでしょう。

また、アレルギーに関するアドバイスは時代とともに変化してきました。かつてはアレルゲンとなる食べ物の開始を遅らせることが推奨された時期もありましたが、現在は早期導入の有効性を示す研究が増えています 。今回の研究も、そうした最先端の知見の一つです。常に新しい情報に関心を持ち、医師と相談しながら、わが子に合った方法を見つけていくことが大切です。

V. 大切な注意点と、お医者さんとの話し合い 👩‍⚕️💬

ここまで最新の研究についてお伝えしてきましたが、いくつか大切な注意点があります。

  • この記事は医学的なアドバイスではありません。 赤ちゃんの栄養方法について何か変更を考える場合は、必ず事前にかかりつけの小児科医やアレルギー科医に相談してください 。
  • あなたの赤ちゃんは、世界でたった一人の存在です。 家族のアレルギー歴、赤ちゃん自身のアトピー性皮膚炎の有無、出生時の状況など、さまざまな要因がアレルギー発症に関わってきます。SPADE研究は一般の赤ちゃんを対象としていましたが 、ABC試験はリスクのある赤ちゃんを対象としていました 。個別の状況を考慮することが何よりも重要です。
  • 研究の背景を理解しましょう。 今回ご紹介した研究は、いずれも日本で行われたものです 。アレルギーの基本的なメカニズムは万国共通ですが、食生活や遺伝的な背景は地域によって異なる場合があります。
  • 一人で悩まず、医師にどんどん質問しましょう。 医師は、あなたの不安や疑問に耳を傾け、一緒に最善の方法を考えてくれるパートナーです。「こんなこと聞いてもいいのかな?」と遠慮せず、気になることは何でも相談してみてください 。
  • もしアレルギー症状が出たら? 粉ミルクや新しい食べ物を始めた後に、じんましん、嘔吐、下痢などの症状が見られた場合は、自己判断せずにすぐに中止し、医師の診察を受けてください 。

医師と話す際には、この記事で知った情報を元に、「うちの子の場合はどうでしょうか?」と具体的に質問してみるのも良いでしょう。親が積極的に情報を集め、医師と協力して子どもの健康を守っていく姿勢が、これからの時代にはますます大切になってきます。

VI. あなたの授乳・栄養の旅路:自信と情報を持って ✨👶

赤ちゃんの栄養について考えることは、時に難しく、不安を伴うかもしれません。しかし、最新の研究は、牛乳アレルギー予防の新たな可能性を示してくれています。特にSPADE研究 が示した、生後1~2ヶ月の間にごく少量の牛乳製粉ミルクを毎日与えるという方法は、多くの赤ちゃんにとって、母乳育児を続けながら牛乳アレルギーのリスクを減らすことができる、希望に満ちたアプローチと言えるでしょう。

大切なのは、情報を鵜呑みにするのではなく、それを理解し、専門家である医師とよく相談した上で、わが子にとって最善の道を選ぶことです。科学的な根拠と、母親としての直感を大切にしながら、自信を持って赤ちゃんの栄養に向き合っていきましょう。

この記事が、アレルギーの心配を抱えるママたちの心を少しでも軽くし、前向きな一歩を踏み出すためのお手伝いができたなら、これ以上の喜びはありません。すべての赤ちゃんとご家族が、笑顔で健やかな日々を過ごせることを心から願っています。

参考文献:

  1. Urashima M, Mezawa H, Okuyama M, Urashima T, Hirano D, Gocho N, Tachimoto H. Primary Prevention of Cow’s Milk Sensitization and Food Allergy by Avoiding Supplementation With Cow’s Milk Formula at Birth: A Randomized Clinical Trial. JAMA Pediatr. 2019;173(12):1137-1145.
  2.  Sakihara T, Otsuji K, Arakaki Y, Hamada K, Sugiura S, Ito K. Randomized trial of early infant formula introduction to prevent cow’s milk allergy. J Allergy Clin Immunol Pract. 2021;9(3):1173-1181.e8.
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