昼間は落ち着いているのに、布団に入ったとたんに掻き始める。寝ついたと思ったら、無意識に掻きむしって、朝にはシーツに血がついている。子どもも眠れず、それを見ている親も眠れない。

「掻かないようにさせる」ことを目標にすると、うまくいきません。

子どもに我慢を求めることになり、親も見張り続けることになるためです。

打つべき手は、次の3つです。

  1. 炎症を抑える — 掻きたくなる状態そのものを減らします
  2. 皮膚のバリア機能を整える — スキンケアを徹底します
  3. かゆくなる条件を減らす — 環境と入浴と寝具を見直します

ここで紹介する内容は一般的な目安です。

お子さまの状態によって適した方法が変わりますので、詳しくは診察でご確認ください。


なぜ、夜になるとかゆくなるのか

なぜ、夜になるとかゆくなるのか

① 体が温まる

布団に入ると体温が上がります。温まると、かゆみを感じやすくなります。入浴直後も同じです。

② 気がまぎれるものがない

日中は遊びや会話で気がそれています。ところが、布団に入って静かになると、かゆみに注意が向きます。

③ 寝具と寝間着が肌に触れ続ける

素材や縫い目、洗剤の残りが刺激になることがあります。

④ 無意識に掻いてしまう

寝ている間の掻き壊しは、本人には止められません。寝ている子どもに「我慢しなさい」と言っても効果はありません。

⑤ 日中のケアが足りていない

夜だけの問題に見えて、実は日中の炎症が残っていることが多くあります。

この日中のケアが、いちばん重要です。

夜の対策だけを重ねても、日中に皮膚の炎症が残っていれば、かゆみが生じて夜に掻いてしまいます。


対策① 炎症を抑える

まずは、外用ステロイド薬などを適切に使って皮膚の炎症をしっかりと抑えることが先決です。

ここで、多くの方から「見た目が綺麗になったら、薬をやめてよいのでしょうか」というご質問をよくいただきます。

当院では、次のようにお伝えしています。

皮膚がツルツルになったら、医師の指示のもとで徐々にステロイドの使用回数を減らし、保湿に切り替えていきます。ただし、一旦見た目が綺麗になっても皮膚の下で炎症はくすぶっており、自己判断でステロイドを急にやめるとすぐにぶり返してしまいます。

綺麗になったことで薬を塗るのをやめてしまい、再燃してしまうケースも多いため注意が必要です。

塗る量と期間、減らし方は、お子さまの状態と部位によって変わります。自己判断で急にやめず、診察で確認しながら進めてください。


対策② スキンケアを徹底する

対策② スキンケアを徹底する

アトピー性皮膚炎は、皮膚の乾燥やバリア機能の低下によって表面に隙間が生じ、そこからアレルゲンや細菌、刺激物質が侵入することで炎症が起こります。

つまり、バリアを整えることは治療の一部です。

① 「量」と「回数」を意識して保湿する

薄く伸ばすだけでは足りないことがあります。塗る量の目安については、診察でご案内します。

② 入浴後、時間をおかずに塗る

お風呂上がりは水分が逃げやすい状態です。

③ 洗い方を見直す

  • お湯は熱くしすぎない — 熱いお湯はかゆみを強めることがあります
  • ゴシゴシこすらない — 泡で洗い、押さえるように流します
  • 石けんが肌に残らないよう、しっかり流しきる

④ 季節で変える

乾燥する時期は、保湿の量も回数も増やす必要があります。

⑤ 続ける

調子がよいときにやめてしまうと、また戻ります。これが、いちばん多い後戻りの原因です。


対策③ かゆくなる条件を減らす

夜に向けて、環境を整えます。

① 部屋の温度と湿度

部屋を暖めすぎないことが大切なポイントです。布団に入ってから体温が上がりますので、部屋はやや涼しめが目安になります。

乾燥する季節は、加湿も検討してください。

② 寝具

  • シーツ・枕カバーをこまめに洗う
  • 肌に当たる面の素材を見直す
  • ダニ対策 — 当院ではアレルギー診療において、環境整備の観点からもご案内しています

③ 寝間着

  • 縫い目やタグが肌に直接当たっていないか確認する
  • 化学繊維による刺激を避けるため、綿100%などの肌に優しい素材を選ぶ
  • 洗剤や柔軟剤が服に残らないよう、十分なすすぎを行う

④ 入浴の時間

寝る直前の入浴は、体温が上がったまま布団に入ることになります。少し時間を空けると、落ち着くことがあります。

⑤ 爪

短く切り、やすりで整えておいてください。掻いたときの傷が浅くなります。

⑥ 掻き壊しやすい部位の保護

状態によっては、覆っておく方法が有効です。部位や皮膚の状態によって適否が変わるため、診察でご相談ください。


「掻いたら叱る」をやめる

かゆみは、我慢でどうにかなるものではありません。特に、寝ている間の掻き壊しは、本人にはどうにもできません。

叱られると、子どもは「隠れて掻く」ようになります。そうなると、どこをどれくらい掻いているのかが、保護者の方にも見えなくなります。

やっていただきたいのは、次の2つです。

  • 掻いてしまった場所を、一緒に確認する — 責めるためではなく、状態を知るためです
  • 掻きたくなったときに、代わりにできることを決めておく — 冷やす、保湿を塗る、など

そして、「掻かないと眠れない」という状態が続いているなら、それは治療が足りていないサインです。お子さまの努力の問題ではありません。


夜の30分を、決まった流れにする

毎晩ばらばらのことをしていると、続きません。「寝る前の流れ」を固定してしまうと、負担が減ります。

① 入浴する(就寝の1〜2時間前を目安に)

ぬるめのお湯で、泡で洗い、押さえるように流す。熱いお湯とゴシゴシ洗いは、かゆみを強めます。

② 上がったらすぐに保湿する

時間をおかないことが大切です。全身に、決めた量を塗ります。

③ 処方された薬を、決められた場所に塗る

保湿と薬の順番や塗り分けについては、診察でご案内します。

④ 爪を確認する

伸びていれば切り、やすりで整えます。

⑤ 寝室を整える

暖めすぎない。布団に入ってから体温が上がることを見込んで、やや涼しめにしておきます。

⑥ 寝間着に着替える

縫い目やタグが当たっていないかを確認します。

この6つを毎晩同じ順で行うと、抜けが減ります。そして、「今日はここまでできた」と分かるようになります。

うまくいかない日があっても構いません。

1日の完璧さを目指すことよりも、無理のない範囲で毎日続けることのほうが大切です。


それでも眠れない夜に

対策をしていても、かゆみが強い夜はあります。

そのときにできることを挙げます。

① 冷やす

冷たいタオルや保冷剤(タオルで包んで)を、かゆい場所に当てる。温まるとかゆみが強くなりますので、逆の刺激を与えると和らぐことがあります。

ただし、長時間当て続けたり、直接肌に触れさせたりしないでください。

② 手を握る、さする

掻く代わりの動作を用意しておくと、掻き壊しが減ることがあります。

③ 保湿を追加する

乾燥が引き金になっていることがあります。

④ 部屋を少し涼しくする

布団の枚数を1枚減らすだけでも変わることがあります。

⑤ 記録しておく

「どの部位が、どのくらいの時間、どんなときに」を控えておくと、診察のときに役立ちます。悪化した日に何があったか(食事、運動、入浴の時間、気温)も、あわせてメモできると理想的です。

そして、そうした夜が続いているなら、それは治療を見直すタイミングです。「もう少し様子を見よう」とご家庭だけで抱え込まず、どうぞ受診してご相談ください。


保護者の方が消耗しないために

この病気の大変さは、お子さまだけのものではありません。

夜間に何度も起こされる、掻く音で目が覚める、毎日のシーツ洗濯、薬を塗る時間の確保など、保護者の方の心身の負担は計り知れません。

当院は、お子さまとご家族に寄り添い、ご負担を軽減できるよう診療を進めていきます。

次のことを、遠慮なくお伝えください。

  • どの作業が、いちばん負担になっているか
  • どこまでなら続けられそうか
  • 薬を塗る時間が取れない事情があるか

続けられない方法を勧めても、結果は出ません。

生活のしかたに合わせて調整できることがあります。


受診の目安

受診の目安

次の場合は、診察をおすすめします。

  • 夜、かゆみで眠れない日が続いている
  • 朝、シーツや寝間着に血がついている
  • 掻いた場所がジュクジュクしている、黄色い汁が出る
  • 掻いた場所が赤く腫れて、熱を持っている
  • 保湿だけでは追いつかなくなってきた
  • 薬を塗っても、すぐぶり返す
  • 薬の減らし方が分からない
  • 食べ物との関連が気になっている

特に、浸出液(黄色い汁)が出たり、赤く腫れて熱を持ったりしている場合は、とびひなどの細菌感染を起こしている可能性があるため、早めの受診をおすすめします。

なお、当院は「食べ物が原因ではないか」というご相談も承っています。ただし、アレルギーの可能性がある食物をむやみに除去することは適切ではありません。現在は食べられなくても徐々に食べられるようになるケースもありますが、過度な除去は栄養の偏りを招き、生活の質を下げてしまいます。

自己判断で除去を始める前に、ご相談ください。


アレルギー・マーチという考え方

当院では、小児期のアレルギーを一連の流れとして捉えています。

小児期に発症するアレルギーの多くは、赤ちゃんの乳児湿疹にはじまり、離乳食を開始するころからは食物アレルギーやアトピー性皮膚炎がみられるようになります。生後6か月ころでは、ゼーゼー・ヒューヒューを反復する喘鳴を認める気管支喘息が出現することもあります。

小学校入学のころからは、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎などが増加してきます。

アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)を持ったお子さまに、これらのアレルギーが次々と連鎖して現れる現象をアレルギー・マーチと呼びます。

この場合、一連の流れとしての診療が大切になります。

それぞれの疾患を、検査や臨床症状に基づいて正しく診断し、適切なケアと治療を行うことで、現在かかっている疾患の悪化を抑えることができ、さらには新たなアレルギーの発症予防にもつながります。

つまり、いま目の前にある夜のかゆみに対応することは、その先の見通しにも関わります。


よくある質問

Q. ステロイドを使い続けて大丈夫でしょうか。

A. 塗る量や期間、減らし方はお子さまの状態や部位によって異なります。見た目がツルツルになっても皮膚の下に炎症が残っている場合があるため、自己判断で急に薬をやめず、定期的に受診しながら医師の指示のもとで段階的に減量し、保湿ケアへ移行していきます。

Q. 保湿剤だけでは足りませんか。

A. 炎症が起きている状態では、保湿だけでは追いつかないことがあります。炎症を抑えてから、保湿で維持するという順序になります。

Q. 夜だけ症状が強いのですが、日中も薬を塗るべきですか。

A. 夜のかゆみは、日中の炎症が残っていることの現れであることが多くあります。塗る回数とタイミングについては、診察でご案内します。

Q. 何歳くらいで良くなりますか。

A. 経過には個人差が大きく、一律にはお答えできません。適切なケアと治療を続けることが、いまできることです。

Q. 保育園や学校で薬を塗ってもらえますか。

A. 施設によって対応が異なります。塗る回数やタイミングを、通っている施設の事情に合わせて調整できることがありますので、ご相談ください。

Q. 食べ物を除去したほうがよいでしょうか。

A. 自己判断での食物除去は避けましょう。不必要な制限は栄養の偏りや生活の質(QOL)低下につながるおそれがあるため、まずは検査や診察でご相談ください。


せいせきこどもクリニックでできること

せいせきこどもクリニックでできること

当院は、多摩市一ノ宮(聖蹟)の小児科・小児アレルギー科です。

  • アレルギー疾患に対応 — 食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息をはじめ、花粉症やハウスダストなど、お子さまの様々なアレルギー疾患に対応します
  • 一連の流れとしての診療 — アレルギー・マーチという考え方に基づき、いまの疾患の悪化を抑え、新たなアレルギーの発症予防にもつなげます
  • 環境整備の観点から — ダニ(ハウスダスト)や花粉が影響していることもありますので、環境整備についてもお話しします
  • 土曜日・日曜日も診療 — 平日忙しいご家族のために、土日も診療しています
  • WEB予約・WEB問診を導入 — お待たせしない医療の提供を目指しています。空きがあれば直前の予約が可能です
  • 拠点病院と連携 — 東京都立小児総合医療センターや東京都立多摩南部地域病院と連携し、必要な場合はスムーズにご紹介できます

診療時間は8:30〜12:30(月・水・木・金・土・日)と14:30〜18:00(水・木・金・土・日)です。火曜・祝日は休診です。受付終了時間は午前が12:15、午後が17:45です。


まとめ

  • 「掻かせない」を目標にしない。掻きたくなる状態そのものを減らす
  • 取り組むべき対策は、①炎症を抑える ②スキンケアを徹底する ③かゆくなる条件を減らすの3つ
  • 治療の原則は、原因を除去し、スキンケアで皮膚のバリア機能を整え、外用ステロイド薬で炎症を抑えること
  • 見た目が綺麗になっても炎症はくすぶっている。自己判断で急にやめず、医師の指示に従って段階的に減量し、保湿に切り替える
  • 皮膚の乾燥やバリア機能低下により隙間ができ、刺激物質やアレルゲンが入って炎症が起こる
  • 夜にかゆくなるのは、体が温まる/気がまぎれない/寝具が触れ続ける/無意識に掻く/日中のケア不足が重なるため
  • 環境面では、部屋を暖めすぎない/寝具と寝間着を見直す/入浴と就寝の間を空ける/爪を整える
  • 「掻いたら叱る」はやめる。隠れて掻くようになり、状態が見えなくなる
  • ジュクジュクする、黄色い汁が出る、腫れて熱を持つ場合は早めに受診する
  • 自己判断での食物除去はしない。むやみな除去は栄養の偏りを招き、生活の質を下げる可能性がある
  • 小児のアレルギーはアレルギー・マーチとして連鎖することがあり、一連の流れとしての診療が大切

夜のかゆみでお困りでしたら、多摩市一ノ宮(聖蹟)のせいせきこどもクリニックにご相談ください。

監修者情報

せいせきこどもクリニック 院長 松本 崇宏(まつもと たかひろ)

せいせきこどもクリニック

院長 松本 崇宏(まつもと たかひろ)

多摩市一ノ宮で、地域の子どもたちの「かかりつけ医」として、風邪から健康診断、アレルギーまで幅広く診療しています。

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものです適した治療やスキンケアの方法、薬の使い方は、お子さまの状態と部位によって異なり、個人差があります。薬の量や減らし方は自己判断で変えず、診察でご確認ください。

参考文献